朝起きてInstagramを開くと、本当にたくさんの花に囲まれたテイラー・スウィフトとトラヴィス・ケルシーの姿が目に飛び込んできた。

「あなたの英語の先生と体育の先生が結婚します」幸せの絶頂にいる2人の姿に思わず笑みがこぼれる……。2人はついに婚約を発表したのだ。

テイラー・スウィフトは世界のどこへ行っても知らない人はいないほど、トップオブトップの歌姫だ。2006年に16歳でデビューした彼女は、現在のような言葉に表せないほどの人気を獲得するまで、着実に歩みを進めてきた。彼女の恋愛や過酷な経験は曲に落とし込まれ、それらの曲はファンたちの人生と共にあった。時には心を救い、励ましてくれるものでもあった。

筆者も中学・高校時代、そして今に至るまで、人生の分岐点でテイラーのことを思い出しては音楽を聴いて勇気をもらってきた一人だ。スウィフティー(ファンの呼び名)と自称するには未熟だと自覚しているが、それでもテイラーには人生を彩ってもらった当事者である。

『ハンナ・モンタナ/ザ・ムービー』(2009年)

筆者が彼女のことを知ったのは、音楽からではない。2009年の映画『ハンナ・モンタナ ザ・ムービー』に本人役で出演していた時のことだ。主人公のマイリー/ハンナ(マイリー・サイラス)がテネシーを訪れる物語で、テイラーは慈善コンサートのシーンで登場する。テイラーが歌う「Crazier」がロマンチックに包む空気感の中、マイリーと彼女の父親がそれぞれ気になる相手とダンスをするシーンだ。

わずかな出演だが、“カントリー歌手”テイラーと映画の雰囲気がマッチしていて、とても大きな存在感を残した。だからこそ筆者の記憶にも色濃く残っているのだろう……。

Hannah Montana The Movie Trailer

『バレンタインデー』(2010年)

小さな男の子からおじいちゃんおばあちゃんのお話まで、「バレンタインデー」をテーマに様々な“愛”を描いたオムニバス映画で、テイラーは彼氏ウィリー(テイラー・ロートナー)から大きな白い熊を贈られて有頂天の高校生フェリシアを演じた。エレベーターに熊を抱えて乗って来て、一緒になった女性にその嬉しさをべらべらと喋り、学校でも人目を気にせずラブラブっぷりを発揮。ウィリーがフェリシアからのプレゼントをもらった時に微妙な表情を一瞬見せるシーンは、おそらく2人の恋愛はそれほど長く続かないようにも思わせる……が「お互いしか見えない!」という若さと青春の記憶を蘇らせてくれるシーンでもある。

実際にプライベートでも付き合っていたと言われているテイラー・ロートナーと並んで、「テイラーとテイラーよ」と言っている可愛らしいオフショットも映画の最後に映されているのも必見!

Valentine’s Day

『ギヴァー 記憶を注ぐ者』(2014年)

差異を持たない新たな社会を舞台に描く『ギヴァー 記憶を注ぐ者』。近未来的な世界観の中で人々は過去の記憶を持たずに過ごしていた。ある日、学生を卒業した人々に適した仕事を割り当てられる儀式で、ジョナス(ブレントン・スウェイツ)は記憶を受け継ぐ“レシーヴァー”に選ばれる。“レシーヴァー”は唯一記憶を持つものとして、この新たな社会に助言をする役割だ。

テイラーは、ジョナスの10年前に“伝達者”として選ばれたものの、そのつらい記憶に苛まれたローズマリーを演じた。“喪失”の記憶を得てから、逃げるように去っていった彼女。ピアノを弾いて“音楽”というものの存在を喜びの表情で訴えかける姿が印象的に映る。それは、普段から作詞で心の内を言葉にしているテイラーだからこそ表せたものだったと感じた。

The Giver Official Trailer #1 (2014) 

『キャッツ』(2019年)

人間が猫を演じるという奇妙さ故か、映画としては酷評されていた『キャッツ』(2019年)。テイラーはキャストとして出演するとともに、演劇界で名曲を生み出してきたアンドリュー・ロイドウェバーとともに楽曲も作り上げた。

彼女が演じたのは、魅惑的な容姿と声で惹きつけるボンバルリーナ。三日月の形をした装飾に横たわり、会場のいたるところをステージに変え、どんな場所でも人々の注目を浴びる姿はテイラーそのもの!普段ステージで見せているしなやかな表現力が存分に生きた作品だった。

『キャッツ』日本版予告

『ミス・アメリカーナ』(2020年)

彼女の姿を様々な媒体で見ている中で、一番勇気をもらえた映画はドキュメンタリー『ミス・アメリカーナ』だった。普段我々には“トップスター”としての姿しか見えていないが、この映像では“一人の人間”としての平凡とも言える生活や、トップスターだからこそのしかかる想像もつかない重圧、恋愛に曲作りまでを捉えている。

※詳しいレビューはMOVIE MARBIEさんの【あなたの勇気を呼び覚ます! 強くて魅力的な女性キャラクター特集】番外編(https://moviemarbie.com/special/actress_10/)で書かせていただいたのでぜひご覧ください!

『ミス・アメリカーナ』予告編 – Netflix

『folklore:ロングポンド・スタジオ・セッション』(2020年)

コロナ禍で世の中が鬱々としている中、山奥のスタジオに集まって、アルバム『folklore』に収められた楽曲を歌い続ける『folklore:ロングポンド・スタジオ・セッション』。暖かな雰囲気と柔らかな音楽が心を包み込んでくれるような感覚があって、家でゆっくり音楽と映像を楽しみたい気分の時にうってつけの作品だ。

それぞれの曲はどんな思いを胸に誕生したのかを振り返りながら進んでいく内容で、多くの共感を生んできた彼女が普段どのように世界を見ているのか、頭の中を少し覗けたような感覚になる。英語を翻訳した日本語の詞でさえ、「どうしてこんな表現が浮かぶのだろう」と思うほど美しく、身近なものであるから、英語で直接受け取った人々にはもっともっと大切な言葉になっているに違いない、改めてそう思わせてくれる。

folklore:ロングポンド・スタジオ・セッション|予告編|Disney+ (ディズニープラス)

『アムステルダム』(2022年)

1930年のニューヨークを舞台にした『アムステルダム』は、医者のバート(クリスチャン・ベール)と弁護士のハロルド(ジョン・デヴィッド・ワシントン)に、第一次世界大戦で世話になった将軍の娘リズから「父の解剖をしてほしい」と頼まれるところから始まる。そのリズを演じているのがテイラーだ。

リズは彼らに解剖を頼んだものの、父が殺されたという事実を知って恐れおののく。そしてその直後、何者かに推されて車に轢かれ、亡くなってしまう。バートたちはその罪をかぶせられて追われることになるのだ。物語はこの将軍の死を中心に回っていくが、そのきっかけとなるのがリズ。わずかな出演だが、豪華キャストの一端を担うテイラーの最新の演技はとてもナチュラルに物語に引き込んでくれる。

映画『アムステルダム』予告

『テイラー・スウィフト: THE ERAS TOUR』(2023年)

そして何より、2023年に公開された『テイラー・スウィフト: THE ERAS TOUR』のことは忘れられない。2023年から2024年の約2年かけて行われた「The Eras Tour」を映画にしたもので、筆者は公開日に映画館へ駆け込んだ。彼女の今までのアルバムを振り返るというライブであり、映画館という閉鎖された空間の中だからこそ、アルバムごとに留められている当時の記憶がぶわっと蘇った。

筆者が行ったのは地方の映画館だというのに、(客席には空席が多いものの)思わず体が動いてしまっている、というような人たちがたくさんいた。本当に楽しく幸せな時間を分けてもらったと、今でも鮮明に覚えている。

『Taylor Swift | The Eras Tour (Taylor’s Version)』|予告編|歌姫テイラー・スウィフトのコンサート映画|Disney+ (ディズニープラス)